■Co-Cr磁気記録薄膜における微細磁気構造の研究■


材料研究部中性子散乱研究室   鈴木 淳市

 磁気記録密度は10年で10倍の割合で向上し、最近では、10Gbit/inch2を実現するための各種チャレンジが行われている。 理想の磁性薄膜の条件は、"薄膜が磁性微粒子から構成され、かつその粒子数密度が高く、しかも粒子間が磁気的に分離されている。"こととされるが、 Co-Cr薄膜はこのような微粒子構造に起因すると思われる優れた磁気記録特性(垂直磁気異方性、高飽和磁化、高保磁力など)を示す物質として非常に注目されている。 そこで、この微細磁気構造の存在を検証し、磁気特性との関係を明らかにするためにJRR-3M冷中性子小角散乱実験装置(SANS-J)を用いて実験を行った。 その結果、薄膜面内では82nm程度の大きさを持つ結晶粒の内部に細長く8.4nm×36nm程度の大きさを持つCo濃度の高い磁性粒子(領域)が存在し、 この領域はCr濃度の高い非磁性領域により磁気的に分離されていることが明らかとなった。 この研究で実証された微細磁気構造を利用することにより、10Gbit/inch2の記録密度を実現する夢が大きく膨らんだ。 この微細磁気構造を2.5インチのハードディスク装置に使用することができるようになれば、光ディスクの10〜100倍に相当し新聞の朝刊約10年分の情報量を格納できるようになる。(共同利用)

Co-Cr薄膜の微細磁気構造モデル

中性子磁気散乱断面積(DΣ/dΩ)の散乱ベクトルサイズ(Q)依存性