■JRR-2における材料照射研究■


材料研究部材料応用工学研究室   渡辺 勝利

 原研はもとより日本における材料照射研究の上で、中心的な役割をはたすとともに大きな足跡を残してきたJRR-2が平成8年12月にその幕を閉じたことは私共ユーザーにとっても感慨無量なるものがある。 昭和41年に初の国産高濃縮ウラン燃料を装荷して照射実験を開始して以来実に30年の永きにわたりその使命を達成したことは関係各位の絶えまざる御努力の賜であるとともに慶賀にたえない。
 私達はこの原子炉をChicagoPile-5に因んで永年CPと呼んで親しんできたが、そこでの照射対象材料は、まさに日本における原子炉開発の歴史そのものを反映するものであった。 主要なものについて年代順に述べると、アルミニウム及びその合金(主として研究炉を対象)、軽水炉圧力容器用フェライト鋼、及び高速炉用オーステナイト鋼等の特性評価研究ないしは開発研究が行われた。 中期以降は高温工学試験研究炉のための各種の耐熱合金、フェライト鋼及び黒鉛材料等の照射挙動解析研究並びに核融合炉を指向した材料の開発研究が進められた。

TiAl金属間化合物の照射による強度特性変化 (菱沼ほか)

 極く最近の特筆に値することとして、上図に核融合炉用の先進材料として位置づけられているTiAl金属間化合物の照射後強度特性変化を示すが、 照射により延性増加が観測され、このことは下写真に示す損傷組織の観察結果とも対応し、従来の材料照射では見られなかった極めて好ましい結果が得られた。

TiAl金属間化合物             316ステンレス鋼

ステンレス鋼と較べたTiAl金属間化合物の照射損傷組織 (菱沼ほか)