■読者の声■


アイソトープ部製造課   小林 勝利様

 今から30年以上も前、先輩より、「ラジオアイソトープ(RI)の製造とかけて何と解く?」と問われたことがあった。 答えに窮すると、A氏は、「船頭」と解くと謂う。「はて?」と困惑する。満面笑みを浮かべたA氏おもむろに、その答えは?
 「研究炉利用」というと、つい、この問答が浮かぶ。その答えは、「櫨(ろ)で動く」。言い得て妙である。さほどに、アイソトープ製造(部)は炉のおかげで動いてきた。 「研究炉ひろば」創刊号(1995,No.1)にも、すでにRI製造と利用が紹介されている。
 私的な紹介も許していただけるなら、小生3分の1世紀以上をRI製造とその周辺を「漕いで」きた。当初は「国産RI」という錦の御旗で大船に乗った感があり、技術開発したRIはユーザーから歓迎された。 自主技術の確立が尊重され、「科学技術者」として諸外国にも負けないRIを作るぞ!という密かな決意に将来をかけていた。
 しかし最近、儲からない大量精製RI、輸入出来る長寿命RIは、赤字(税金)を出してまで作る必要はないと「国」から云われるようになってきた。 一方、採算のある密封線源RIなどは民営化に道を開けということであろうか?「合理的」運営が求められ、短寿命RIのみの供給と研究開発への指向(転換)が強く迫られている。 「櫨」は削り直しも効くし、新しく買い換えることも出来る。しかし、船頭は老いるばかり、その技術を継承する人がいない。
 奇しくも放射能発見から1世紀、RIはその初期よりその有益性が認められ、人類の福祉と生活向上に寄与してきた。 RIのもつ特徴からすれば、「研究炉利用」により、もっと、もっと世の中に役立つRIがあると確信する。 その開発には、まさに蓄積された非密封・大量RI製造技術(ノウハウ:宝船?)とその継承(人材養成)が求められている。