■読者の声■


ひたちなか市   萩野谷 欣一

 JRR-2の運用使命を終了し解体されると聞き感無量を覚える1人です。昭和35年の臨界から制御室の火災まで関与してきましたが、 改めて神原豊三博士を始め数々の師、先輩、同僚と共に過ごした日々、平成2年新JRR-3の完成記念に招かれ当時の方々とお会いして元気な姿を拝見できたことなど懐かしく思い出します。
 時あたかも動燃再処理施設の火災、爆発事故で新聞等を賑わしており、現役時代安全施策に身を置いた1人として、又制御室火災の当事者としても過去をもう一度振り返る思いです。
 事故はトラブルが3つ以上重なって起こるものです。原子力の諸管理施設で負圧を保つ施設では、火災等の事故が起きても空調を維持することは原則であり、 これを無視した場合安全解析は根底から覆されます。この為空調設備にトラブルが起きてもファン、フィルター等は必ずバックアップを義務付けている訳です。 この重要性は設備の概念設計時の安全ファクターの1つだからです。
 安全対策が充分施されている施設でも運用する人が知識とそれを活用する知恵を持たねば事故は無くなりません。
 危機管理、安全管理が叫ばれ日頃の対策を考えろと問題にしますが、あなたが今目の前で火事が起きている瞬間どう行動しますか。 マニュアルにこう書いてあるからこう行動するとは限りません、その時の心理状態によります。 また時によりマニュアルに書いてある対処方法がその場に適切ではなく拡大される場合もあるのです。 マニュアルは一指針に過ぎず最良と考えられる対処の判断と行動は己の知恵からされるものです。 現実、動燃の当事者はどうしていいか解らなかったのが本音ではないでしょうか。批判、批評は誰でも出来ます、他山の一石として謙虚に学んでいただきたいと思います。 振り返ってみてああすれば良かったと反省できてもその瞬間とっさの判断行動は知識と知恵に基づいた経験からしか生まれません。
 老朽化した設備はどうしても故障、トラブルは起こりがちで安全解析も当時の知識での判断であり、 設備の改善、改良と同様に安全の見直しは今居る人達の経験と新しい知識で何時も再検討を加えることは必然なことなのです。
 これからは、炉の解体という大仕事を前に種々の検討がなされているでしょうが、JPDR、JRR-3の解体で諸先輩の経験を生かしてもなお未知の事柄が起きること、 否それの方が多いと思います。先人は未知で経験の無いときAMFの助言と知識と知恵でJRR-2を建設したのです。 放射能のある解体作業の方が数倍も危険性の多いことを念頭に慎重にことを進めて行き、無事終了される事を陰ながら祈っております。