■海外交流研究員の声■


 私が5年前に初めて日本を訪れた際に想像していたのは、神話と超精密機器の国、芸術の域まで高められた美食料理、世界的に有名なエレクトロニクス技術を駆使する人々、 最新の車が行き交う通りにあふれるサムライやゲイシャなどでした。
 あれから時は過ぎましたが、日本での社会生活の特色をはっきりと理解するには、今回の私の滞在期間を含めてまだ時間が足りないようです。
 実際は「郷に入っては郷に従え」という言葉がしめすように、文化の違いからくる身の回りの戸惑いを上手に切り抜けたり、この国の日常生活上違和感なく振る舞えるよう、 もっと色々な事を知りたいと思います。
 日本人はとても親切で友好的です。家族から遠く離れ東海研究所で働く私に、課長を始め同僚の人々までがまるで家族のように接してくれます。
 私は特に、日本人の自分の感情や意見を相手おしつけない、という他人への接し方が素晴らしいと思います。 また、喜びや歓迎を表現するのにも体全体を使うのではなく、目や口元だけで表現する日本風のちょっと押さえた微笑みにも好感が持てます。
 日本人が公の場で怒りを表したり、かんしゃくをおこしたりするのをめったに見かけません。 このように振る舞える人々は、私の国ベトナムでは少数の知識階級に限られますが、日本では皆が自然に身につけていることを知りました。
 古くから「百聞は一見にしかず」と言われるように、私は非常に勤勉な日本人を尊敬するとともに、日本は将来にわたっても発展を続け、 今と同様経済大国であり続けると信じるようになりました。
 以前、私は「ベトナム人はいずれ日本人のようになりたいですか?」と尋ねられたことがありますが、国民性というものは本来侵されるべきものではなく、 その国らしさを生かしつつ、別の国のさらに良い所を学び取ってゆくことが一番大切なように思えます。
 今回、日本での経験の感想を求められ、私はこれからのベトナムが何を学んでゆくべきか、そのために私の日本での社会生活経験をどのように伝えたらよいのか、 そんなことを考えつつこの文章を書きました。

Nuclear Research Institute Dalat,Vietnam   Ho Manh Dung