研究炉ひろば」のご愛読有り難うございます。今号では、研究炉の照射相談について、研究炉側の対応等をこの紙面を借りてお話ししたいと思います。


 まず試料にどのくらいの放射線(中性子線)を照射したいのかということです。 原子炉特に照射孔のある炉心や反射体領域には中性子線やγ線等の放射線が豊富に飛び交っています。 この放射線の線束の値は照射孔特性一覧(研究炉利用ハンドブック61頁、74頁あるいは研究炉利用ホームページ内)の通りです。 たとえばJRR-3Mの炉心中心に位置するVT-1照射孔では、高速中性子束が2×1014(n/cm2.s)、 熱中性子束が3×1014(n/cm2.s)、 反射体領域に位置する水力照射設備(HR-1)では高速中性子束が1.7×1012(n/cm2.s)、 熱中性子束が9.6×1013(n/cm2.s)、 γ線が2.5×106(Sv/h)です。希望する照射量をそれぞれの照射孔の線束で除すれば照射時間が算出されます。 算出した照射時間がそれぞれの照射孔の照射可能時間内であれば、その照射時間の照射が可能です。 照射には標準照射と非標準照射が有ります。これは当研究所のキャプセル設計・製作基準によって決められています。 通常危険性等が無く、原子炉への影響等も無く、試料の重量及び発熱量が下表の値を超えなければ、標準試料として照射できます。 これに対して重量の重い試料、計装付キャプセル等は非標準試料となります。非標準試料の場合は、研究炉部の安全審査により安全を確認してから照射可能となります。 また、非標準試料の場合は、キャプセルの設計製作等より詳細な検討を要します。あらかじめ研究炉利用課計画調整係(TEL 029-282−5594)にご相談下さい。 ここでは標準試料について話を進めます。 試料の大きさは、標準キャプセルに入る大きさとなります。標準キャプセルの寸法は照射孔特性一覧の通りです。 試料の放射化ですが、これは試料にどのような元素がどの程度含まれていて、どのくらいの生成量があるのか予め計算により求めておく必要があります。 生成量が大きい場合は、半減期にもよりますが、照射後取り扱いが厄介となります。試料に高分子材料等が含まれている場合、照射により分解されガス等を発生するおそれがあります。 照射時間が、10分程度までならポリエチレン封入でも可能ですが、石英アンプル等により(減圧)封入することをお勧めします。 照射後試料の健全性等を測定する場合、研究炉部の所有するホットの実験室を使用することが出来ます。 ただし、生成した放射性核種がそれらの実験室で使用許可のとれている核種でなければなりません。 実験室への計測機器の持ち込みは可能ですが、測定中それらの計測機器が汚染しないよう使用する必要があります。 汚染した場合汚染を除去しなければ、実験室から持ち出すことが難しくなります。 照射後、試料を利用者の所有する実験室に持ち帰って実験する場合は、それらの実験室がRIの使用許可がとれている必要があります。


試料の重量及び発熱量

照射設備 最大重量 発熱量
JRR-3 垂直実験孔設備(VT-1) 90g 600w
垂直実験孔設備(RG-1,2,3,4) 90g 600w
垂直実験孔設備(BR-1,2,3,4) 90g 600w
垂直実験孔設備(SH-1) 90g 100w
回転照射設備(DR-1) 90g 100w
均一照射設備(SI-1) 26000g* 1700w*
水力照射設備(HR-1,2) 90g 200w
気送照射設備(PN-1,2) 10g 75w
放射化分析用照射設備(PN-3) 10g 2.5w
JRR-4 簡易照射筒設備(D照射筒) 50g 150w
簡易照射筒設備(D照射筒) 2400g* 1200w*
簡易照射筒(N照射筒) 18100g* 10000w*
気送管照射設備 10g 5w

*試料がシリコン単結晶の場合


ご連絡先 : 日本原子力研究開発機構 原子力科学研究所 研究炉加速器管理部 研究炉利用課
TEL:029-282-5591
FAX:029-282-6763
E-mail:kenkyuro-riyou@jaea.go.jp