平成14年度 研究炉運転・管理計画
研究炉利用のえとせとら
皆様お久しぶりでございます。前回のえとせとらから随分時間が経ってしまいました。
また、研究炉利用のよもやま話をさせていただきます。
今回は中性子散乱実験についてです。
何分浅学な小生なものですから、中性子散乱のプロの方からお叱りを受けそうなのですが、おこがましくもあえてチャレンジしたいと思います。
さて、中性子散乱実験とはいったいどんな実験なのでしょうか。
誰でも一度や二度、池の中に小石を投げ入れたことがあると思います。
投げ入れた所からは、円状に波紋が広がっていきます。池の中に何本かの杭があったらどうでしょう。
杭まで到達した波紋はその杭の所で更にまた円状に波紋を発生させます。
杭の近くの適当な所に観測点を設けると、そこではいくつかの杭で発生した波紋が強め合ったり弱め合ったりするのを観測できます。
この強め合ったり弱め合ったりするのがいわゆる波の回折現象です。
観測された波の状態から杭の位置や大きさを決める等、これが波による回折実験です。
そうです、中性子も波の性質を持っているためこれと同様の実験ができるのです。
波を中性子線、杭を原子に例えるとよいでしょう。
中性子が試料(原子等)に当たって散乱する、散乱後の中性子を測定し、原子配列(構造)や原子の運動(エネルギー)の状態、さらには磁気構造等を研究する、
これが中性子散乱実験です。
同様の実験にX線回折実験があります。
X線回折では原子番号の近い元素からなる物質の構造決定が難しい、原子番号の小さい原子が見えにくいということがあります。
これに対して、中性子回折ではこれらのハンディはありません。
逆に中性子吸収断面積の大きい元素を含む物質(B、Cd等)での中性子散乱実験は不可能です。
また、低温、高圧下などの複合条件下での構造決定には中性子散乱実験が有利です。
そして中性子が磁気モーメントを有するという性質は磁性体の研究が中性子散乱実験の独壇場になっているゆえんです。
< 行事メモ >
平成14年2月8日 | 医療照射専門部会(東京) |
平成14年2月20日 | JRR-3の三軸型分光器アップグレードに関するワークショップ(原研 東海研) |
平成14年2月20日 | 炉内中性子照射専門部会(東京) |
平成14年2月22日 | 中性子ビーム利用専門部会(東京) |