研究炉における照射・実験利用の推移と、最近の利用状況について述べます。
 図1、2は、平成2年度から平成12年度までの照射と実験利用の推移を表しています。 照射においては、平成6年度頃から短寿命核種の放射化分析を目的とした照射が増えてきたために、実績が伸びています。 平成8年度から平成10年度まで減少しているのは、JRR-2の運転終結、JRR-4の改造工事、平成10年度におきたJRR-3冷中性子源装置のトラブルによるものです。 一方、実験利用では多くの装置がJRR-3に設置されているために、JRR-2や4の影響は小さくなっています。
 図3に、平成12年度の照射利用状況を表してみました。放射化分析が圧倒的に多く9割にも及んでいます。 その他では、半導体の材料であるシリコンの照射、医療・工業用に利用されるRIの製造、原子炉燃料材料照射、照射損傷の順になっています。 放射化分析の試料別割合をみると、動物・植物・魚介類が最も多く、以下に金属・無機化合物、土壌、岩石、大気浮游塵・フィルター等で、 環境汚染の調査を目的とした環境試料の分析が活発に行われています。
 図4は、平成12年度の実験利用状況です。中性子散乱実験が80%以上を占め、続いて中性子即発γ線分析、中性子ラジオグラフィ、低温化学実験の順です。 これらの実験のほとんどは、JRR-3の中性子ビーム実験装置を利用して行われています。 JRR-3の実験設備については、毎年度利用能力をはるかに超える申請があり、調整に苦慮しています。 そのような状況であるため12年度も能力の100%が利用されました。 JRR-4では、即発γ線分析装置が約90%、医療照射用に整備し一般の照射も可能な中性子ビーム設備が約70%と高い利用率でした。
 図5は、研究炉での実験の大半を占めるJRR-3における中性子散乱実験の利用状況です。 磁性体、ウラン化合物の結晶構造や磁気構造の解明を目的とする磁性や構造の研究の占める割合が大きくなっています。 それに続くのが高分子材や生体物質(ヒト・リゾチーム、DNA)等生物の研究です。 また、装置の開発を目的とした実験も行われています。グラフの中で超伝導の割合が小さくなっていますが、これは重複する磁性の方でカウントされているためです。