■世界の土壌・植物系におけるハロゲン元素の賦存量と動態■


農業環境技術研究所   結田 康一

 ハロゲン元素は化学的・生理的活性が高く、環境中での易動性も大きいため、動植物での欠乏や過剰、人工の有機ハロゲン化合物による環境汚染が地球規模で多発している。 農環研はこれらの問題解決の基礎研究として、標題に掲げたテーマの研究を放射化分析法を武器にして取り組んでいる。
 環境試料中3ハロゲン元素(ヨウ素・窒素・塩素)の分析例は世界的に未だ少なく、 放射化分析法以外は試薬や周辺環境等からの汚染や各種干渉をうけるため分析値の信ぴょう性が低い。 農環研ではこれらの妨害を回避でき、かつ高感度・高精度となる「化学分離を伴う放射化分析法」によって、 これまでに採取した世界13か国の土壌と植物、合計2‚000点の分析を終了させた。 土壌中3ハロゲン元素の含量レベルは大気からの供給量と土壌の吸着・脱離力で決まり、これらは気温と水分に大きく支配された。 例えば土壌中ヨウ素含量は気温、降水量とも低いカナダが最も低く、温帯多雨気候下の日本が最高となった。 しかし、潅漑によって湛水化される水田土壌はカナダ並みに低かった。(図)



(試料摂取地)
Mexico City周辺草地の土壌断面

 今後更に対象国を倍増させ、 ハロゲン元素の賦存在量と動態に関する普遍制の高い法則性の発見と自然調和型の人類の繁栄につながる動態制御法の開発に発展させたいと夢みている。

(共同利用)