■隕石から太陽系の起源を探る■


東京都立大学理学部   海老原 充

 隕石はそれ自信でもある種のロマンを感じさせるが、研究対象としても大きな夢を持たせてくれる。 それは、太陽系の起源を秘めているからである。隕石のもつ45.5億年という値が太陽系の年齢に等しいということに始まり、 太陽系の起源や進化に関しては我々は実に多くのことを隕石の研究を通して知ることとなった。 隕石は固体物質であるからその研究には物質科学的手法はすべて適用できる。 こと化学に限っても、元素分析、同位体分析、状態分析など、いろいろなアプローチが可能である。
 隕石の元素分析法としては中性子放射化分析法(NAA)が最もしばしば利用される。
 下の図は主としてNAA法で求めた隕石の分析値を太陽大気の元素組成値と比較したものである。 多くの元素が傾き45度の直線上に乗ることから、隕石の組成は太陽系の元素組成を保存していることが分かる。

図  隕石と太陽大気の元素存在度の比較

 また下の表は隕石中の白金族元素存在度を地球の珪酸塩岩石中の値と比べたものである。 貴金属元素の濃度が非常に高いのが隕石の特徴である。 NAA法では、多くの元素が感度よく分析でき、得られた値の確度(正確さ)も高い。 隕石はこれらNAA法の長所を最も遺憾なく発揮できる試料である。 昨今の研究用原子炉をとりまく環境は国の内外を問わず必ずしも楽観できないが、これからもNAAを通じて太陽系の謎解きを楽しめるよう願うばかりである。(共同利用)

隕石中と地球の珪酸塩岩石中の白金族元素存在度(ppb)の比較
  Ru Rh Pd Os Ir Pt
隕石 710 130 550 490 455 1010
珪塩酸(地球) 5.0 0.9 3.9 3.4 3.2 7.1