●先端基礎研究センター 生体物質中性子回析研究グループ 新村 信雄
タンパク質やDNAの三次元立体構造を原子レベルで決定することは、生命現象の理解にとって重要なことです。 これは、X線結晶構造解析でなされてきましたが、生理機能に重要な役割を果たす水素の位置は中性子回析法で初めて観測されます。 ただし、中性子回析法はX線回析法に較べて中性子強度が弱いので、光学系を工夫し、試料に当たる中性子強度を増したり、高効率の中性子検出器を装備したりする必要があります。 原研ではJRR-3M炉室に、光学系、検出系に新技術を導入し、日本で初めて生体物質中性子回析計を制作し(写真1)、タンパク質の水素原子位置決定の実験を開始しました。 とは言え、解析のための完全なデータセットを得るのに約4〜6ヶ月の実験期間が必要なのが現状です。
写真1.生体物質中性子回析計
更に、装置の性能を10倍以上向上させるため、中性子イメージングプレート検出器の開発を行い(写真)、現在、 このイメージングプレート検出器を装備した中性子回析計を建設中であります。これが実現すれば、1ヶ月以内で必要データを収集することが期待できます。
写真2.中性子イメージングプレート検出器で撮ったタンパク質回析像