■複合高分子材料の界面の構造■


東京大学物性研究所   松下 裕秀

 複合高分子材料の設計では、性質の異なる高分子の混合により各々の長所を生かしつつ短所を相補的に補う物質を作り出すことが大きな目標の一つになっている。 ところが、高分子物質は、分子量が大きいため少しでも性質が異なると混ざらないのが普通である。 そこで、例えば、分子内に異種成分を化学結合で結び付けた複合高分子、共重合体が注目される。 その中でも異種成分各々がシークエンスとしてつながれているもの(これをブロックという)はブロック共重合体と呼ばれる。 この共重合体は、疑集状態では分子内で異種成分が反発すると同時に、同種の成分が互いに寄り集まるので自発的に規則正しい周期構造を持つようになる。 この時形成される界面の構造が材料物性に大きく影響する。 このような界面は中性子反射率法(Neutron Reflectivity‚NR)を用いて詳細に調べることができる。

 図1はシリコンウェハー上に作られた薄膜中の分子の集合状態と界面の様子を模式的に示したものである。 実験では、スチレン-2-ビニルピリジンブロック共重合体のスチレン部を重水素でラベルしてコントラストを強くした試料のNRが測定された。

図1.ブロック共重合体膜中の層状構造と高分子/高分子界面

 解析の結果、図2で示したように、薄膜の深さ方向に交互に相分離した相が見られ、それらの一繰り返し分(赤と青の各々1相分)は約800Å、 赤と青の界面の厚みは約40Åであることが明らかになった。(共同利用)

図2.層状構造から得られる中性子反射率