■被覆粒子燃料のアメーバ効果■


燃料研究部燃料照射研究室   鹿志村 悟

 HTTR(高温工学試験研究炉)の燃料として使用される被覆粒子燃料では、熱分解炭素や炭化珪素被覆層がFP保持の役目を有しているため、 これらの健全性が燃料寿命を決定する大きな要因となっている。
 照射による被覆損傷の原因のひとつにアメーバ効果と呼ばれる挙動がある。これは、被覆粒子が高温、 大きな温度勾配下で使用される場合にC+CO2↔2CO反応による炭素の低温側への質量移行により燃料核が逆に高温側へ移動する現象で、 これによって被覆を浸食し、著しい時は被覆損傷の原因となる。そこで、このアメーバ効果に関するデータ取得のためにJRR-2による照射試験を行った。 試験は、温度勾配下で被覆粒子を照射出来る構造のキャプセルを設計し、通常の使用条件より厳しい温度条件で加速照射を行った。

被覆粒子のアメーバ効果

その結果、約1600℃以上の温度で照射した資料には上図に見られるような顕著なアメーバ効果の発生が見られたが、1300℃以下では大きなアメーバ効果は観察されなかった。

 上図は、4%濃縮度被覆粒子の燃料核移動速度(KMR=Kernel Migration Rate)の温度依存性を示している。 図中の直線は燃料の安全解析で使われている燃料核移動速度式で、150℃/cmの温度勾配時の移動速度を示している。 HTTRの運転条件で被覆粒子燃料を燃焼した場合、この式から燃料核移動量は被覆層の厚さに対し十分小さいことを明らかにし、アメーバ効果に対する健全性が確認された。