■窒素含有量の高いα-U2N2+Xの結晶構造解析■


燃料研究部燃料照射研究室   芹沢 弘幸

 我々の研究室では、高純度の窒化物燃料を比較的低温で生成しうる手法としてアンモニア窒化法を取り上げ、研究を進めている。 α-U2N2+Xは、同手法を用いて直接得られる窒化物であり、窒化物燃料(UN)製造プロセスにおける、 いわゆる中間生成物である。この物質は、非化学量論的化合物であり、生成条件によってその組成が広い範囲(1.5<N/U<2.0)で変化する。 通常、窒素ガスとU金属との反応により得られるα-U2N2+Xの窒素含有量は低く、N/U比で1.5から1.75の組成範囲にある。 従来の報告により窒素含有量の低い相はMn2O3型結晶構造をとることが知られていたが、 窒素含有量が増加した場合にどのような挙動を示すかについては不明であった。 そこで、アンモニア窒化法によって生成する窒素含有量の高いα-U2N2+Xについて JRR-3Mに設置されているHRPDを用いて中性子回折による結晶構造解析を行った(下図)。

HRPDを用いて測定したα-U2N2+Xの中性子回折パターン

 その結果、窒素含有量の高いα-U2N2+X(1.75<N/U)が、窒素含有量の低い試料と同様に、 Mn2O3型結晶構造を保つことが明らかとなった。 また、α-U2N2+X中の窒素原子は、結晶格子内で2種類の四面体位置(16(C)及び48(e))に分かれて配置するが、 対称性の低い48(e)サイトに選択的に小屋委固融する事が判明した(下図及び下表)。

Mn2O3型結晶構造におけるN原子の位置

窒素原子に関するパラメータ

N/U 同価位置 位置パラメータ 占有率
XYZ
1.73 16(c)0.1210.1250.0920.48±0.02
48(e)0.3760.1370.3820.97±0.02
1.82 16(c)0.1260.1390.1070.81±0.02
48(e)0.3750.1340.3770.91±0.02
1.60* 16(c)---------0.20
48(e)---------1.00
1.60* 16(c)---------0.31
48(e)---------1.00
1.60* 16(c)---------0.37
48(e)---------1.00
1.60* 16(c)---------0.41
48(e)---------1.00
*Masaki and Tagawa