●材料研究部材料設計研究室 谷藤 隆昭
酸化リチウム(Li2O)は核融合炉のトリチウム個体増殖材の最有力候補材として注目されている。
中性子照射によりLi2O固体内にトリチウムが生成される。
このトリチウムの回収が容易なLi2Oを開発することが重要となる。
単結晶及び焼結体としてJRR-2、JRR-4で照射した。照射後の試料を電気炉で加熱し、放出トリチウムを通気型プロポーショナル・カウンターに導き測定した。
標準材料として単結晶粒をJRR-4、T-パイプで10min(熱中性子照射量:4x1016n/cm2)照射した。
照射後の試料を等温加熱し放出トリチウムを測定した。この結果、トリチウム放出は等価球モデルによる拡散式に従い、拡散が律速過程であることが検証できた。
得られた拡散係数を下図に示す。拡散の活性化エネルギーは約82kJ/molと一定であった。
Li2Oのトリチウム拡散係数の温度依存性
一方、かさ密度の異なる焼結体からのトリチウム放出挙動を中性子照射量を変えて調べた。 2℃/minの等速昇温加熱によるトリチウムの放出ピーク温度をかさ密度、気孔率とともに下表に示す。
等速昇温による気孔率の異なるLi2O焼結体のT放出ピーク温度の照射量依存性
かさ密度 (%T.D.) |
結晶粒径 (µm) |
開気孔率 (%) |
閉気孔率 (%) |
トリチウム放出のピーク温度(℃) | 4X1016 (n/cm2) |
2X1017 (n/cm2) |
2X1018 (n/cm2) |
2X1019 (n/cm2) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
76.4 | 13 | 20.6 | 3.0 | 300℃ | 320℃ | 330℃ | 350℃ |
80.8 | 17 | 16.4 | 2.8 | 310℃ | 320℃ | 340℃ | 350℃ |
83.5 | 20 | 13.9 | 2.6 | 290℃ | 320℃ | 340℃ | 350℃ |
85.7 | 23 | 11.3 | 3.0 | 300℃ | 320℃ | 340℃ | 350℃ |
86.7 | 25 | 8.1 | 5.2 | 350℃ | 360℃ | 380℃ | 400℃ |
88.0 | 27 | 6.0 | 6.0 | 350℃ | 360℃ | 380℃ | 410℃ |
89.0 | 28 | 4.2 | 6.8 | 350℃ | 360℃ | 380℃ | 410℃ |
90.5 | 31 | 2.3 | 7.2 | 430℃ | 420℃ | 420℃ | 430℃ | 550℃ | 550℃ | 560℃ | 540℃ |
焼結体からの放出特性は単結晶の場合と全く異なり拡散律速ではない。 この原因の究明のため、気孔率の異なる種々結晶体を表に示す中性子照射量まで照射した試料の等価加熱実験を進めている。