平成7年度も、昨年に引き続いてJRR-3Mにおける利用が増加しました。 図-1は、JRR-3Mにおける利用状況を示す図で、前年同様中性子ビーム実験では利用能力の100%が利用されており、要望に応じきれない状況です。 サイクル照射においても利用能力の82%が利用されており、その大半は原子炉用燃料・材料照射及びRI製造のための照射です。
図1.JRR-3Mにおける利用状況(平成7年度)
図-2は、平成2年度から平成7年度までの照射利用実績(キャプセル数)の推移を示した図であり、平成7年度は照射利用が最も多くなっています。 平成7年度で高濃縮燃料の運転を終了したJRR-4は、年間32サイクルと例年より運転日数が少ないにも係わらず、767キャプセルの照射利用がありました。 炉によってそれぞれ特徴が違うとはいえ、JRR-2とJRR-3Mの照射利用が増加している状況でこれだけの利用があるのは、改造後の利用を裏付けるものでありましょう。
図2.研究炉における照射利用の推移
図-3は平成7年度の照射利用の分野別実績を示す図であり、放射化分析が最も多くなっています。 例年通り、放射化分析の試料は金属材料・無機化合物、生物、土壌、ろ紙、河川水残渣、岩石、隕石、血液等様々です。 放射化分析の利用者は、原研内より原研外の利用者が多く、図には記載されていませんが国公立の大学、農林水産省関係の機関、民間関係機関等です。 それに対して、原子炉用燃料・材料の照射や生産用RIの製造照射では原研内の関係課室が利用しています。 シリコン照射については、放射線照射振興協会がその利用を一手に担っています。
図3.研究炉における照射利用状況(平成7年度)
実験利用についても、図-4に示すようにJRR-3Mの利用が伸びています。 これは、前年度に据え付けたビーム実験装置(冷中性子散乱実験デバイス開発装置(LTAS)、生体高分子結晶構造解析用中性子回折計(BIX)等)の利用を開始したことによります。 BIXを用いた実験では、前号で紹介したように、中性子イメージングプレートを開発し、その結果タンパク質の構造を世界で初めて確認することができ、つくば奨励賞を受賞しています。
図4.研究炉における実験利用の推移
図-5は平成7年度の実験利用の分野別実績です。
JRR-3Mの実験利用の大半を占める中性子散乱実験が、全体でも8割を占め、中性子ラジオグラフィ実験、中性子即発γ線分析実験、JRR-4での遮蔽実験、
その他が残り2割を分け合っています。
JRR-3Mにおける中性子散乱実験の利用(図-6参照)では、中性子回折の特徴を生かした磁性の実験が最も多く、構造解析、超伝導物質関係の実験、
生物や高分子の中性子回折実験が行われました。
図5.研究炉における実験利用状況(平成7年度)
最後に、JRR-3Mの中性子散乱実験について図6に示す。 磁性の研究が最も多く、ついで構造研究、生物、実験装置・技術の開発、基礎物理、高分子とつづく。超伝導の研究は、グラフでは少なく見えるが実際はもっと多い。 これは、超伝導が磁性や構造と関係が深く、物性の研究という位置づけから磁性や構造でカウントしているためである。生物関係の研究は、グラフに現れているとおりかなり増加している。
図6.JRR-3Mにおける中性子散乱利用状況(平成7年度)