信越半導体?? 犀潟工場 丸山 信男 課長・新保 茂樹さん
放射線利用振興協会を通じて、原研の研究炉でシリコンの照射を行っている信越半導体?轄メ潟工場の品質保証課、丸山課長と新保さんにお話を伺いました。
●どんな会社なのですか。
社名のとおり、半導体(正確にいうと半導体製品にするための高純度シリコンウェーハ)を製造している会社です。 半導体は、電話、洗濯機、冷蔵庫等の家庭電子機器はもとより、コンピュータ、オーディオやビジュアル関連機器、医療用電子機器、工業用電子機器等、 ほとんどの工業製品で使われています。現在世界のシリコンの需要は、年間約12‚000トンもあります。そのうちの3分の1を日本が占め、日本の約1割を我が社が担っています。 世界全体の約98%がCZシリコンであり、残りがFZシリコンです。
●CZシリコンとFZシリコンというのはどういうシリコンなのですか。
CZ、FZというのは、シリコン単結晶の製造方法で、CZはチョコラルスキー法、FZはフローティングゾーン法の略です。
CZ法は、ナゲット状の多結晶シリコンを高純度石英るつぼ中で溶融させ、単結晶を上方向に成長させる製造方法です。
この場合、シリコン融液が直接るつぼに接触しているため、石英るつぼからの酸素混入が避けられず、CZ法Si単結晶には、
1017〜1018cm3の酸素が含まれています。
これに対し、FZ法は、棒状多結晶シリコンの一部を高周波加熱コイルによって溶融し、単結晶を下方向に成長させる製造方法です。
このため、基本的にはシリコン融液への不純物混入は少なく、ドーパント無添加の場合には、多結晶シリコンのドーパント濃度がほとんどそのまま単結晶に反映されます。
我が社でFZ法により単結晶を製造しているのは犀潟工場のみで、他の工場はすべてCZ法により製造しています。
●原研の研究炉で照射しているシリコンはどのようなシリコンなのですか。
FZ法により製造したシリコン単結晶です。原子炉で照射するとシリコンの中に約3%含まれている30Siが熱中性子を吸収して 31Pに変わります。この31Pが導電性をもつため、 熱中性子照射量を制御することによって目的とする抵抗が得られるのです。原子炉で照射する場合、照射方法を工夫して照射量を均一にすることにより、 抵抗を高度に均一にすることができるため、高品質の製品が得られます。したがって、もともとのシリコン単結晶も、 高抵抗で不純物の少ない(抵抗分布がフラットである)FZ法で製造したシリコン単結晶でなければならないのです。
●原子炉で照射したシリコンは、何に使われるのですか。
直流送電用光サイリスタやパワートランジスタ、産業用モータ駆動モジュール、電力制御用MOS(パワーMOS)等、 大直径に加え高抵抗率領域における均一性が必要な特殊デバイスに対して強い需要があります。
●原研の研究炉利用上の問題点、要望等をお聞かせ下さい。
問題点は、照射精度の安定です。特に、原子炉で照射する場合、照射後製品が戻ってきてから抵抗率を測定するため、 それまでは目的の抵抗値になっているかどうか確認出来ないということがあります。また、要望としては、コスト削減と納期短縮はもちろんですが、年間を通じて利用があるので、 それに対応してほしいことです。トラブルによる運転停止をなくするとともに、定期検査等の原子炉停止に対しては、複数の原子炉により補完してもらえるとありがたいのですが。
−ありがとうございました。
左が新保さんで右が丸山課長です