■改造JRR-4紹介■

−医療照射が加わりさらに充実−


 JRR-4は、燃料濃縮度低減化のため現在改造工事を進めています。それに伴い利用設備も更新されます。
 下図は、JRR-4の鳥瞰図です。耐震性をよくするための原子炉建家の改修工事(表紙の写真参照)、各種安全設備、冷却設備、計測制御系統設備の整備等を行い、 平成10年10月の試験利用運転開始を目ざしています。

JRR-4鳥瞰図


 さて、改造後の利用設備がどのようになるのかここに述べましょう。下図は改造後の原子炉本体・実験照射設備を表しています。 リドタンク実験設備は従来生物照射等に利用されていましたが、改造後は主として医療照射に利用されます。医療照射(BNCT)は、平成8年までJRR-2で行っていましたが、 JRR-2の運転終結に伴いJRR-4で行えるようにするものです。BNCTとは、照射前にホウ素化合物を患者の体内にあらかじめ注入しておき、その後、中性子を脳患部に照射し、 10B(n,α)7Li反応から生成されるアルファ粒子とリチウム粒子により腫瘍細胞を破壊する療法です。 この療法は、ホウ素化合物が血液脳関門現象により正常な細胞に入りにくく腫瘍細胞に集まりやすいという性質を利用して、腫瘍細胞のみを選択的に破壊することができるため、 外科的摘出手術が難しい悪性脳腫瘍に高い治療効果を得ています。改造JRR-4の医療照射設備はJRR-2より高い熱中性子束に加えて熱外中性子も利用できるため、 照射時間の短縮と脳深部の腫瘍の治療が可能となります。

原子炉本体・実験照射設備


 また、シリコン照射では、従来は直径4インチまでのシリコンしか照射できませんでしたが、大口径照射設備(Nパイプ)の設置により直径5インチの照射が可能となります。 気送管照射設備は、従来の照射に加えて、半減期が1分以下の核種の放射化分析も行えるようになります。 プール実験設備には即発ガンマ線分析装置を整備し医療照射時におけるホウ素濃度測定に活用するほか、広く一般に開放し各種の測定、実験などの利用に供します。 その他の照射設備(Tパイプ、Sパイプ、Dパイプ)あるいは実験設備(冷却水循環ループ、プールにおける遮蔽実験等)についても利用が可能です。 原子炉運転技術等の習得を目的とした原子炉運転実習、制御棒校正実験、各種特性測定も従来どおり行えます。
 以上、JRR-4は、医療照射等の利用が加わりこれまで以上に有用な研究炉となります。 下にJRR-4照射孔配置図を下表に利用設備の改造前後の比較と改造後の特性を示します。

JRR-4照射孔配置図


改 造 前 改 造 後
利用設備 利用設備 照射時間 最大試料寸法
(mm)
熱中性子束
(n/cm
2・s)
リドタンク実験設備
γ 線、純中性子照射場
として利用
中性子ビーム設備
主にBNCT等の医療照射に利用
10分〜6時間
 
 
200×200
 
 
2.3×109
 
 
冷却水循環ループ
16Nのγ 線を利用して
放射線測定器の校正試験
冷却水循環ループ
 (同 左)
 

 
 

 
 

 
 
プール実験設備
遮蔽実験等
 
プール実験設備
遮蔽実験等
即発ガンマ線分析装置

 

 
10×10

 
1×10
7
気送管照射設備
気送管照射
:半減期数分以上
 
気送管照射設備
気送管照射
短寿命核種放射化分析装置
:半減期1分以下の核種
5秒〜20分
 
 
 
Φ20×50L
 
 
 
4.0×1013
 
 
 
水力照射設備
Tパイプ
水力照射設備
Tパイプ(変更なし)
1分〜6時間
 
Φ26×115L
 
6.0×1013
 
簡易照射設備
Sパイプ
Dパイプ
Lパイプ(4インチ)
 
簡易照射設備
Sパイプ(変更なし)
Dパイプ(変更なし)
Nパイプ(大口径照射設備:5インチ)
 
1分〜6時間
1分〜6時間
1分〜6時間
 
 
Φ26×115L
Φ26×115L
Φ140×450L
 
 
5.0×10
13
4.2×1013
2.0×1013
 

JRR-4利用設備、改造前後の比較と改造後の特性