●安定化プルトニウム燃料・燃焼法研究特別チーム 山下 利之
現在及び近い将来、世界的にプルトニウム(Pu)は余剰傾向にあり、このPuの利用且つ消滅が世界的関心事になっている。岩石型燃料(ROX燃料)は、
PuO2を核的不活性元素の酸化物(アルミナ、スピネル、ジルコニア等)に分散させ、
現行軽水炉で239Puを殆ど燃焼・消滅させるために日本原子力研究開発機構が提案した燃料である。
ROX燃料は従来の燃料概念とは異なり、原子炉内の振る舞いは未知なため、照射試験による実証性確認が必要である。
まず、95年には核兵器Puを用いたROX燃料試料の照射
(20MW換算97日、最大熱中性子照射量:8.2×1020n/cm2)を
JRR-3Mの炉心ベリリウム反射体領域の照射孔BR-1で、試料温度は600、800並びに1000℃に制御して実施した。
照射後試験によりROX燃料の形状安定性、FPガス放出、固体状FPの燃料中の分布状態等に興味ある結果を得た。
特にFPの分布に関する知見は、使用済ROX燃料は再処理をせず直接地層処分するため、FP等の地下水への侵出性評価のために重要である。
また、照射試料の質量分析を行い、この結果はPuがほぼ計算予測どうりに燃焼したことの実証とともに、Pu燃焼についての核特性予測精度の信頼性向上、
核計算コードの検証にも資されている。
実際の燃料におけるFPガス放出、燃料スエリング等の評価には、ピン形態での照射が望まれる。このため、98年には第2回JRR-3M照射試験として、
3種の組成の異なる燃料ペレットを収容するピンの照射を行う。JRR-3Mでの加速照射試験による照射データは、世界に先駆けたものであり、余剰Pu課題の解決の糸口になるだろう。
岩石型燃料のSEM像(2次電子像)とFP分布