平成11年度の研究炉における利用は、JRR‐3Mの8サイクルの共同利用運転と、JRR‐4の37週の共同利用運転に相俟って順調に行われました。 図1は、平成2年度から平成11年度までの照射利用におけるキャプセル数の推移を表したものです。 平成6年度と平成7年度にキャプセル数が増加していますがこれは短時間の放射化分析が大幅に増えたためです。 平成8年度、9年度、10年度とキャプセル数が減少していますが、これは8年度と9年度はJRR‐4が燃料濃縮度低減化に伴う改造のため原子炉が運転されなかったため、 また平成9年度にJRR‐2が運転を終結したためです。 平成10年度の照射利用が大きく減少しているのは、JRR‐3Mが冷中性子源装置のトラブルのため計画の半分しか原子炉が運転されなかったためです。 これに対して平成11年度は計画通りに原子炉の運転が行われ、照射も順調に実施され、平成6、7年度並に照射キャプセル数が増加しました。 図2は、平成11年度の照射利用の利用目的別割合です。 放射化分析が全体の4分の3を占めており、残りの4分の1をRIの製造、シリコン照射と、その他そして原子炉用燃料・材料照射、照射損傷が占めています。 放射化分析の中では、動植物、魚介類を対象とした分析が最も多くなっておりこれは最近生き物に取り込まれる微量元素の定量実験が多くなっているためです。 また大気浮遊塵、土壌等の分析実験もかなり多くこれはほとんどが環境汚染調査のためです。 次に、実験利用の推移を図3に示します。平成10年度はJRR‐3Mの運転日数が減ったため実験利用も半分になってしまいましたが、 平成11年度は、JRR‐3Mの運転が順調に行われたことから、実験利用も過去最多になっております。 平成11年度の実験利用を表したのが次の図4ですが、中性子散乱実験が最も多く全実験利用の88%を占めています。 ついで中性子ラジオグラフィー実験、中性子即発γ線分析とつづきますが、これらはいずれもJRR‐3Mにおける中性子ビーム実験で、 平成11年度も利用可能なマシンタイムの100%が利用されました。 平成11年度はJRR‐4で医療照射が5回行われ、その特性測定等も行われましたが、JRR‐3Mのビーム実験に比べると利用日数が少なく、全体に占める割合も少なくなっています。 図5は、JRR‐3Mにおける平成11年度の中性子散乱実験の目的別利用状況を表したものです。 中性子散乱によってしか実験できない磁性の実験が最も多く、ついで構造、装置、生物と続きます。 超伝導の実験の割合が少なく表示されていますが、これは重複する磁性の実験でカウントされているためです。


   
図1.研究炉における照射利用の推移     図2.研究炉(JRR-3M、JRR-4)における照射利用状況(平成11年度)

※生産用RI:線源RI(医療用RI工業用RI)及び精製RI
注:[]内%は、放射化分析の目的別割合を示す。
   
図3.研究炉における実験利用の推移     図4.研究炉(JRR-3M、JRR-4)における実験利用状況(平成11年度)

図5.JRR-3Mにおける中性子散乱利用状況(平成11年度)