今号では、原子力研究交流制度によりベトナムの原子力研究所を訪問したときの現状について紹介させていただきます。
ベトナムダラット原子力研究所を訪問して 研究炉利用課 鳥居 義也
平成13年11月25日より2週間の日程で原子力研究交流制度により、ベトナムのダラット原子力研究所(DNRI)に派遣され、研究炉の利用について情報交換を行ってきました。
このときベトナムの研究炉と、研究者について感じたことを述べさせていただきます。
ベトナムの原子力研究はベトナム原子力委員会(VAEC)を中心に行われていて、
最も大きな研究施設が熱出力500kWの研究炉(DNRR)を中心に組織されたダラット原子力研究所です。
DNRIはホーチミン市の北東約300kmに位置するダラット市郊外に11万?uの敷地を有する研究所で、約200名の職員が働いています。
研究用原子炉DNRRは1960年代に米国GA社が設置した250kWのTRIGA-Mk?U型炉を旧ソ連の協力の下に500kWの研究炉として改造したものです。
研究炉の利用設備には垂直照射孔、気送管、水平実験孔、熱中性子柱があります。
垂直照射孔ではRI生産(年間約150Ci)、気送管では放射化分析(年間約2500個)の照射を行っています。
DNRIの研究者は少ない資金と、不十分な設備を熱意と努力によって克服し、良い仕事をしているように感じられました。
照射設備や原子炉計装システムなどの改造についてIAEAなどの協力は得ていますが、具体的な設計、製作、管理については自らも参画し、実施しているようです。
また、原子力研究交流制度等により先進国で長期間学んだ人たちも多く、個々の技術力は高いものがあります。
しかし、年間2500個の照射もキャプセルの使い廻しを余儀なくされるなど、資金不足、物不足は彼らにとって大きな問題となっています。
DNRIにおける活動は、研究炉を中心としているようですが、環境測定技術や生物研究など幅広く、
ガンマ線照射による殺菌及び細胞育成技術を応用して薬草キノコである霊芝の生産まで手がけていました。
写真は気送管照射設備の配管で床に置かれた掃除機が照射キャプセル搬送の動力源となっています。
制御装置を含めすべてが手作りの装置でした。
ダラット原子力研究所の研究用原子炉
直接測定用気送管システム
ご連絡先 : 日本原子力研究開発機構 原子力科学研究所 研究炉加速器管理部 研究炉利用課
TEL:029-282-5591
FAX:029-282-6763
E-mail:kenkyuro-riyou@jaea.go.jp