(株)千代田テクノル アイソトープ事業部 線源製造グループ長   林 正明氏

 JRR-3及び4の照射設備を利用して、ラジオアイソトープ(RI)の製造と技術開発を行っている(株)千代田テクノルの林 正明さんにお話を伺いました。


●千代田テクノルの会社について教えてください。

 前身の千代田保安用品(株)が1956年に個人被ばく線量測定業務を開始して以来、RI取扱機器、原子力関連、医療機器・用品とRI・原子力全般を事業分野にしております。 その後、1995年に計量法によるサーベイメータなど放射線区分計量器の校正等の認定事業者として登録しました。 1996年に社名を(株)千代田テクノルと改称し、その間、放射線治療用具の輸入・販売を目指して、2000年、 原研より『ラジオアイソトープ製造・頒布事業』を承継して国産線源の製造を開始し、現在に至っています。


●原研の研究炉で生産しているRIにどのようなものがありますか。

 がん治療用の医療用具として、毎週1回製造する金グレイン(198Au)及び 2ヶ月毎に製造する形状の異なる7種類イリジウム線源(192Ir)があります。 工業用線源としては、溶接部の非破壊検査等の利用されるイッテルビウム(169Yb)、 イリジウム(192Ir)と各種プラント設備のレベル計・液面計として利用されるコバルト(60Co)を製造しております。


●それらのRIはどのように利用されているのでしょうか。

 医療用は、全国の大規模病院核医学科でがん治療薬として使われています。 これらは口腔内、舌、咽頭、食道がん等がん細胞近傍の組織内に刺入される低線量率の治療用線源です。 また、小型(1.1Φ×3.75mm)で高線量率の線源は、急速に普及したリモートアフターローディング装置(RALS)に装備されています。 工業用は、プラント配管溶接部の非破壊検査等に使用されています。


●RIの製造で難しい点は。

 試料運搬、製造、輸送の一連の作業について、安全に計画通りに規格品を製造することです。 医療用のついては、薬事法により製造許可された医療用具として、品質確保に関するGMP規則に準拠していきます。 品質の良い優れた製品を製造するために、品質管理及び製造設備の全般にわたって日常的に配慮します。


●これからRI需要はどのようになると思われますか。

 高度・多様化する医療現場に、密封小線源治療の優位性を強調して需要増につなげていきたいです。
 工業用線源については、景気の回復に期待するところです。


●ちなみにRIのお値段はどのくらいするものなんでしょうか。

 製造した商品に頒布者が経費を掛けて顧客に納品します。従って個々について単価を表示できません。 出荷価格で、医療用3,000万円/年間、工業用7,000万円/年間前後となります。私どもは、金額ではなく非常に大切なものを製造していることをいつも心がけております。


●原研の研究炉に対して何か要望とかありますか。

 原子炉が計画通りに運転されることが製造事業の前提になっています。年間を通して安定して運転されることを望みます。
 年度末になると次年度の製造・出荷計画を頒布者・顧客と調整して年度計画を決定します。次年度の研究炉運転日程をなるべく早め(1月末)に、お知らせ頂ければありがたいです。


−ありがとうございました。

鉛セルでRIを取扱っている社員のみなさん

(株)千代田テクノル アイソトープ事業部 線源製造グループ長   林 正明氏