(株)ひたちなかテクノセンター 野村 精志氏
地域企業への産業支援の一つの方法として研究炉を利用している
(株)ひたちなかテクノセンター 野村精志様にお話を伺いました。
●ひたちなかテクノセンターについて教えて下さい。
弊社は、平成2年10月、当時大幅に不足していた「システムインテグレータ」を国家事業として早急に育成すべく立法化された「頭脳立地法」に基ずき、茨城県が策定した「水戸・日立地域集積促進計画」の中核的運営主体として、国(地域振興整備公団)・茨城県・地元市町村・民間企業の出資として設立されました。現在では地域企業のニーズに対応した産・学・官による新製品開発や技術開発、コンピュータ研修等を中心とした人材育成に取り組んでいます。更にベンチャー支援や創業支援にも力をいれています。社員は臨時社員を含め21人です。
●原研との交流は何時頃から始められたのですか。
平成13年7月からです。J−PARCが建設される事にちなみ、この施設を「地域産業活性化に結び付けられないものか」という事で、原研殿と話し合いを行う中で、J−PARCを広く知って貰い、かつ原研さんと地域企業の結び付きを促進する為、「J―PARC利用研究会」を平成14年1月立上げてから、交流が深まり、平成16年にはJRR−3での実験をするまでになりました。
●実際にどのような分野の方々が研究炉(JRR−3)を利用しているのですか。
研究会の中に「放射線利用研究部会」というのがあり、ここでは、原研OBの方に加わっていただき、メンバー企業(主に製造業)を中心に中性子の産業利用への効用を説明すると同時にニーズを聞き回る企業訪問活動をしてきました。「見えないところが見える」ということで、製造・加工業の皆さんは、内部クラック等が検出出来ないか(故障診断)、加工過程で部品内部に発生する歪が容易に計れないか(残留歪計測)等に大変強い興味を示し、「現物があるからこれで即味見実験してくれないか」という事で、原研殿に御願いし実験を始めた訳です。これまでに共同研究1件、共同利用5件をやってきました。
●研究炉を利用した成果は如何でしたか。
内部歪の計測は中性子利用以外では不可能でしたが、計算値とよく一致する結果が出て、関係者は驚いています。このサンプルは小さい部品であり、計測には原研殿に大変苦労をお掛けしました。「良い実例を得なければ」ということで関係者の皆さんほんとうに頑張っていただきました。また複雑形状の部品では、加工前後で内部歪が大幅に変化する事、しかし材料強度上問題ない範囲である事が判り 製品信頼度を上げる上で、中性子計測はとても有効である事が立証されたと喜こばれました。
●研究炉の産業利用は拡大すると思いますか。
「共同利用」制度が出来ましたので、今の活動をして行けば拡大することは間違い有りません。但し我々の「共同利用」は当面測定実務を原研殿に御願いせざるを得ません。測定実務者、データ解析者等を研究所外のどこで、どう育て確保するかという事で一つの壁があり大きな課題です。また産業利用では『計りたい時にタイムリーに、かつ容易に早く』が必須条件ですので、これに則した体制を整える必要があります。ラジオグラフィも企業の皆さんが知れば測定して欲しいニーズは沢山出てくると思います。
●原研の研究炉に対して何か要望等ありますか。
J−PARCが完成し産業利用が盛んになる為に、原研殿には筋違いな要望と承知の上で(研究所の本来業務からずれる事)御願いがあります。測定実務・指導の労を今しばらく続けていただきたい。出来れば残留応力測定装置(RESA)を1台増設して戴きたいと思います。地域企業の中には指導してもらいながら中性子計測を自らの手でやりたいと云う所も出てきています。増設一台による余裕時間でこれらの事が実現出来ると思うからです。
なお、お問い合わせは下記にお願い致します。
野村精志:snomura@htc.co.jp
ひたち海浜公園のそばに立つひたちなかテクノセンター社屋