研究炉部長 大西 信秋
中性子を用いた基礎研究・基盤技術開発を進めていくうえで、研究炉の果たす役割はますます重要になってきております。
しかし、研究炉を取り巻く情勢は、決して良いとはいえません。
世界的にみても、大型研究炉は勿論のこと、中小型炉も老朽化、運動維持費の削減、あるいは安全性に係わる許認可対応、環境問題等、
いずれをとっても長期的な安定した運転維持が危ぶまれる状況にあります。
最近、米国のオークリッジ国立研究所が計画した超高中性子束炉(Advanced Neutron Source Reactor:ANS炉)の建設計画が、
予算削減の煽りをうけて中止になってしまいました。次期超大型中性子源施設として世界的に期待されていただけに大変残念なことです。
一方、ドイツで大型研究炉(FRJ-II)の建設計画が着々と進展していることや、韓国原子力研究所の多目的研究炉(HANARO)が今年の2月に臨界に達したことは明るいニュースです。
さらに、タイにおいて研究炉の建設計画が着手されることになったとのプレス発表がありました。
研究炉は、中性子を用いた研究・開発のみならず、原子力研究者、技術者の養成のためにも、また、
放射線利が現代の人々の日常生活にいかに密接に関係しているかということをPRするうえでも大いに役立っております。
今後、研究炉利用をより活性化するとともに、さらに発展させるためには、研究炉を利用した優れた研究成果が次々と出され、社会的にも評価されることが必要です。
そのためにも、この「研究炉ひろば」研究成果の発表、利用者間等の情報交換、利用に関する情報提供等を通して、その一端を担うことができれば幸いです。
今後とも、より充実したものとして刊行できるよう努力してゆく所存ですので、ご指導、ご鞭撻をよろしくお願い申しあげます。