■放射化分析による植物試料中の多元素の定量■


環境安全研究部環境化学研究室   上野 隆

 環境化学研究室では、原子力の安全性及び被爆線量評価に寄与するため環境中の放射性核種の移行について研究を行っており、 その一環としていろいろな環境試料中の安全元素の定量も行っている。 環境試料中には、種々の元素が低濃度から高濃度にわたて分布している。 このような試料中の元素を定量するためには、高感度で広い濃度範囲に適用可能な分析法が必要である。 放射化分析法は、試料の溶解を含む化学処理をしなくても(非破壊法)多数の元素を定量できる高感度で広い濃度範囲に適用できる分析法である。 本実験のような環境試料の分析に適していることから同分析法で定量を行った。 今回は、環境モニタリングにおいて指標植物として用いられている松葉(灰化)試料について測定した。得られた結果の一部を以下に示す。

1) 経年変化
  試料は、毎年4月に採取した松葉を使用した。定量した各元素濃度の解析から、Na‚Cl‚Brの濃度に相関がみられ、これらの元素は、 松葉への沈着・移行挙動が類似していると考えられる。

松葉灰化試料中元素濃度の経年変化

2) 松葉の年齢及び洗浄による濃度変化
   試料は、7月似1本の松から1、2、3年葉毎に採取しさらに洗浄(純水を含ませたガーゼで松葉表面をぬぐう)の有無によって松葉を分けて灰化試料とした。
 この結果から、洗浄した試料としない試料中の元素濃度差が小さいことがわかった。 また、年を経るごとに松葉中濃度が減少する元素、増加する元素及び変わらない元素があり、松葉への移行は元素によって差があることがわかった。

部位及び洗浄の有無による松葉灰化試料中元素濃度の変化