前号(研究炉ひろば2号)で研究炉利用の流れをお話しましたが、お約束通り研究炉が何をやっているかここで述べたいと思います。
  ちょっと話が原子力の初歩に戻りますが、原子力がウランの核分裂によって生じることは皆さんもご存知だと思います。 核分裂の際に発生する熱を電気に換えているのが原子力発電です。それに対して研究炉は、核分裂によって発生する中性子あるいはγ線といった放射線を利用しています。
 特に中性子はその利用の中心で、放射化分析、RI製造、中性子散乱実験、中性子ラジオグラフィといったさまざまな分野に利用されています。

 これらの利用が容易にかつ効率よく行えるように、研究炉はコンパクトな炉心に多量の中性子を発生させて中性子密度を高める工夫がなされています。 このようにして得られた中性子を炉心の外にパイプ(導管)で導き利用するのが中性子ビーム実験で、中性子散乱実験、中性子ラジオグラフィ実験、 即発γ線分析実験といった分野に利用されています。
 また、炉心の燃料あるいは反射体領域にスペース(照射孔)を設け、そこで中性子を当てるのが照射利用で、放射化分析、RI製造、原子炉燃料・材料の照射といった分野に利用されています。 そのほかに研究炉では、半導体シリコンの製造、放射線の遮蔽実験、原子炉の運転実習、脳腫瘍のための医療照射、放射線測定器の校正試験等様々な利用が行われています。 先に述べましたように、原子炉の運転実習以外は、いずれの利用も原子炉で発生する中性子等を利用するものです。研究炉になじみの有る方には、 ベイシックすぎて物足りなかったでしょうか?
 次回からは、利用分野毎にその原理と状況等についてお話したいと思います。