(財)日本分析センター 小林 裕さん ・ 佐藤 昭二さん
放射化分析を中心に研究炉を利用している日本分析センターの小林さんと佐藤さんにお話を伺いました。
●日本分析センターは、どんなことをしている機関なのですか。
原子力軍艦の寄港する港の海水、原子力施設周辺、核実験のフォールアウトの影響等を調べるため、
科学技術庁からの委託により日本全国の環境中の放射能調査を行っております。
さらにそれらの調査結果をデータベース化し、関係機関に提供しています。
その他、放射能測定技術の研修、JICA等の国際協力、研究炉を用いた中性子放射化分析等を行っています。
●研究炉を用いた放射化分析では、何を分析しているのですか。
火力発電所や原子力発電所、再処理施設等から放出される廃棄物の環境への影響を調べる目的で、大気浮遊塵中のU、Th、I等の核種の分析測定、 半導体の誤信号等の原因であるU、Thといった半導体中の不純物の分析測定、海産生物の生体中を微量元素がどのように移動するか追跡する目的で、 それらの海産生物中の微量元素の分析測定等を行っています。
小林さんが放射化分析測定器を操作しているところです。
●それは我々の生活にどのように役立っていますか。
空気中や海水中といった環境への汚染の状況が把握できます。また工業材料製品(半導体)の品質向上に役立っています。
●放射化分析を行う上で最も気を使うのはどういう点ですか。
分析結果の正確さ(真値とのずれが少ないこと)及びその精度です。 そのため、分析結果の信頼性の確認を、NIST等の標準試料との比較、他の分析法による結果との比較により行っています。 また、組成の不明な試料について照射した結果、放射性物質ができ過ぎてしまうことのないように、予め成分組成の確認をしてから照射するようにしています。
佐藤さんが化学処理をしているところです。
●研究炉の利用において、問題点あるいは要望がありますか。
細かい点はいろいろあるのですが、立教炉の運転時間が少なくなることから、短寿命核種の放射化分析を行うための照射場 (熱中性子束:1011〜1012n/cm2・s程度)がほしいことと、 使いやすい化学処理の可能なフード等がほしいことです。また、改造後のJRR-4に当センターの測定器を置かせてほしいことです。
編集子から
JRR-3MのPN-3の中段でも熱中性子束が約1012n/cm2・sですので
短寿命核種の放射化分析が行えると思うのですが、ただ装置の機構上多くの数の照射はできません。他2つの要望も含めて今後検討させて頂きます。
●最後に放射化分析の今後の動向についてどう思いますか。
放射化分析は、試料を採取した後の不純物の混入が少ないことと高感度の分析ができること、多くの種類の核種を非破壊で同時に測定できること等、有利な点があります。 それらの有利な点は、今後の一定規模の放射化分析の利用を裏付けるものだと思います。
−ありがとうございました。
左が小林さん、右が佐藤さん